ついつい子どもに伝えたくなる!! 阿蘇の草原ハンドブック このウィンドウを閉じる
pages : 扉絵 ねらいと手引き 解説1 解説2 解説3


解  説

1.草を刈る

(1)採草作業(干し草刈り)

   9月中旬になると、阿蘇の草原のいたるところで採草作業が始まります。場所によっては子供の背丈の3倍ほどにも伸びた草を刈る作業になり、今も昔も重労働です。昔は刃渡り40cmほどの大鎌をふるっての作業でしたが、最近はエンジン付きの刈り払い機や、大型の草刈り機で刈ります。
 むかしはトラクターがなかったので、ほとんどの農家で牛や馬を飼い、トラクターの代わりに使っていました。そのため、餌となる草が必要で、今以上に多くの草を刈っていました。南郷谷のある牧野では、朝、一番列車の汽笛を合図に、みんなが競って草刈りをしたそうです。草が足りないほどでしたから、草刈りのできる場所や期間は厳しく決められていたのです。
草を刈ったあとの草原
刈り払い機によって草刈りをしたところの写真です。扇形のきれいな模様が描かれていますが、草を集めると消えてしまう模様です。秋の草原は、時間限定のランドアートなのです。


コラム 採草作業に使われる道具・機械
採草作業には、いろいろな道具・機械が使われます。

ロールベーラー
刈った草を固めて250kgほどのロールにします。
刈り払い機
機械が入らない急斜面を刈ります。
大鎌
刃渡り40cmもある大鎌は、地元では「雑鎌(ざつがま)」と呼ばれています。
機械が使われる以は採草作業の主役でした。

コラム 草泊まり
草泊まり風景(昭和30年代)

写真・山部光則氏
 草泊まりとは、採草作業の期間中に、ススキで作った小屋に野営することをいう。
阿蘇では、農家の人々が住むカルデラ内の水田地帯と採草地のある北外輪山上との高低差が300m以上もあり、蛇行する坂道を往復するには多大な労力を必要としていた。草泊まりは、こうした労力を節約するため、道路の整備が進まず自家用トラックもなかった昭和30年代まで、北外輪山地域の端辺原野で行われていた。多い時は150戸余りの農家が長い道のりを経てやって来ていたという。
 ススキの小屋は、小川の畔などに、割り竹の骨組みにススキで屋根を葺いてつくった。この草宿づくりは、草刈りの前日までに行われる「小屋掛け」という作業として定着していた。
 この中に、ふとん、食料、炊事道具などの生活用品を持ち込んで寝泊まりをする。
 昔は、採草作業の時期は学校も臨時休校となったので、子どもも含めた家族全員がこの草宿で暮らしながら草刈りをした。長い時は、1回の草泊まりで10日間ほど滞在したという。
(参考:一の宮町史/草原と人々の営み)
草泊まり作成の手順
1.草泊まりの材料
2.草泊まり作成の手順
出典:自然解説マニュアルU

(2)草の保存

   秋になると、澄みわたる青空の下、草原に白い大きなロールがころころと転がっているのを見ることができます。また、最近は少なくなりましたが、草小積み(くさこづみ)を目にすることもあるでしょう。これらは、刈った草を貯蔵するための、今昔の方法です。
 草小積みは、毎年秋になると、新聞記事などにも取り上げられる阿蘇の風物詩です。今より草原の利用が盛んだった頃は、秋になると草原の一面に草小積みが並んでいました。草に束を積み上げそのてっぺんに茅の屋根を乗せて完成する草小積みは、空気のとおりがよく草が痛まない貯蔵法で、これも阿蘇の人々の知恵といえるでしょう。また、こういった生業が、独特の草原景観をつくってきたことにも注目したいものです。
 現在は、大型の草刈り機で平坦な草原を刈るのが主流です。こうした場所では、草小積みではなくロールを作って草を貯蔵します。青い空に白いロール、これもまた新しい阿蘇の風景といえるでしょう。

ロール
ロールベーラーで梱包されたロールは、草原や 田畑の脇に積み上げられて保存されます。
重さは重いもので、400kg近くあります。
草小(くさこ)積み(づみ)
刈った草を冬場の牛の飼料として保存するため積み上げます。最近はあまり見られなくなりました。

草小積みをつくる
1.刈って束にした草を集める。
2.草の束を積み上げる。
3.茅の屋根を乗せて完成。

コラム 野草とは
  「野草」といったときに、皆さんは何を思い浮かべますか。おそらく山や野に咲く花ではないでしょうか。
 阿蘇の草原の話をする場合、野草とは、「半自然の草原に育つ草」のことをいいます。阿蘇の草原と一口に言っても、その中には肥料をまいて牧草を育てている改良草地もあり、野焼きや採草や放牧によって管理している草原を野草地と呼んで区別しています。野草地にはススキやササやシバ等、牛や馬が好んで食べる草の他に様々な植物が生育しており、野草にはそういった植物も含まれています。最近は、ビタミンが豊富なことなど、野草の価値が見直されています。
 このハンドブックにおける「草」は、特に断りがない限り「野草」のことを指します。


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