ついつい子どもに伝えたくなる!! 阿蘇の草原ハンドブック このウィンドウを閉じる
pages : 扉絵 ねらいと手引き 解説1 解説2 解説3


解  説

2.草原の動物

(1)哺乳類
   現在、阿蘇の草原には、キツネ、ノウサギなどのほか、シカ、タヌキ、イタチ、アナグマ、テン、イノシシなどが棲んでいます。
ノウサギは、阿蘇の中央火口丘でよく見られます。阿蘇のウサギは冬になっても毛の色が変わらないので、雪原でもみつけやすい動物です。昔は、学校行事として、12月になると「うさぎ追い」が行われましたが、現在は、小国町や産山村などでイベントとして行われています。
 キツネは、南外輪山の草地や畑のそばに棲んでいて、稜線上を通る散歩道などに姿を現すことがあるようです。阿蘇出身の詩人蔵原伸二郎は、「きつね」という作品で、枯野をさまようキツネの姿を詩に残しています。
また、阿蘇の中央火口丘の山麓には、溶岩性の洞穴がいくつかありますが、米塚付近にある溶岩トンネルには、コウモリが棲んでいます。
 また、阿蘇神社の宮司であった阿蘇家が阿蘇大明神にいけにえを捧げるため阿蘇の草原で行っていた「下野の狩り」の記録「阿蘇下野狩図」には、イノシシ、ノウサギ、シカ、クマ、オオカミ等の動物が描かれています。ちなみに、「下野」とは、草千里、地獄、垂玉(たるたま)、立野及び現在の下野を含む、今の南阿蘇村長陽のほぼ全域を指します。
  (参考:阿蘇の自然ガイド、阿蘇−自然と人の営み−、新・美しい自然公園11、阿蘇の文学)

(2)野鳥
   熊本県下では、約300種の鳥類が記録されていますが、そのうちの半数近くが阿蘇で確認されています。その主流はやはり、草原の野鳥です。
 ホオジロ、ホオアカ、セッカなどは数も多く、見つけやすい野鳥です。ほかに、コジュリン、コヨシキリ、オオジシギなども確認されています。また、草原の小動物を餌とする、ツミ、ノスリ、クマタカなどの猛禽類もみることができます。河口のヨシの原に多いコヨシキリが草原のススキに巣をかけるのも、阿蘇ならではの光景です。
  (参考:阿蘇の自然ガイド、新・美しい自然公園11、新・阿蘇学)


コラム 野にでて見られる主な野鳥
ヒバリ
 初夏の空に高く舞い上がってピーチュクリーチュルと鳴く。草原でよくみかけられる。熊本県の県鳥に指定されている。
ホオジロ
 目立つのでみつけやすい。木の梢など周囲で一番高いところで鳴いている。鳴き声が「一筆啓上つかまつり候(ツィ チョチョチョ ジュクジュクチー)」と、人の耳には聞こえてくると言われている。
ホオアカ
 ホオジロに似てやや大きく、胸に黒と茶の前だれのようなしまがある。ほおの赤褐色も目立つ。鳴き方はホオジロに似ている。チェチィチリンジュなどと鳴く。
コヨシキリ
 ススキを中心とした長草型草原に見られる。スズメより小柄でスマート。この鳥のさえずりはまるでジャズのようで、その軽快なリズム感と複雑なメロディは草原でも際立っている。
セッカ
 ススキを中心とした長草型草原に見られる。チャ、チャ、チャという鳴き声が特徴的でよく聞くことができるが、体が小さいのでみつけにくい。
イカル
 阿蘇カルデラの火口原から山麓に広がる集落、森林に棲息。「お菊、にじゅうし」と聞こえるという鳴き声で親しまれる。阿蘇地方では「モクワリ」と呼ばれる。
モズ
 モズはふだんあまり目立たない鳥だが、春になるとキィーキィキィキィなどと、けたたましく鳴く。細い尾羽根をくるくるとまわすこと、目の付近に黒い筋があることで見分けられる。
カッコウ
 5〜6月にかけてよく電線にとまって鳴いている。灰色の目立たない鳥だが、こまかい紋があるのと、とまっているとき胴体より上に羽根の先がでているという特徴があるのですぐわかる。自分では巣を作らず、他の鳥の巣に卵を産み落として育ててもらうこともある。
ジョウビタキ
 秋も深まると、人家に近いところに現れる。モンツキ鳥と呼ばれ、黒い羽根の白い紋が印象的である。ヒッヒッ、カッカッなどと鳴く。
ツグミ
 秋になるとよくみかける。やや大型の鳥で、群れになって梢にとまっている。通常クワックワッと鳴くが、春の渡りにはキョロキョロッと鳴くこともある。
ホオジロ

ホオアカ

コヨシキリ

ジョウビタキ
(参考:阿蘇の自然ガイド、新・美しい自然公園11、新・阿蘇学)


(3)昆虫
1) チョウ
   熊本県は九州で最もチョウの豊富な県といわれていますが、阿蘇はその中心。県内に土着する117種のうち、実に109種が生息しているのです。これは、森林だけでなく、草原という阿蘇ならではの自然環境があるからです。実際、ヒメシロチョウ、オオルリシジミ、ゴマシジミ、ハヤシミドリシジミなどは草原にしか生息していません。また、ハヤシミドリシジミを除いて、あとの3種は、九州では阿蘇・くじゅうだけにしか生息していないのです。このように、九州でも珍しいチョウが棲んでいることから、阿蘇は「チョウの楽園」ともいわれています。そしてまた、それらのチョウは、九州が大陸と陸続きであった百万年以前に北方から南下してきたチョウで、九州の生い立ちを物語る「生き証人」なのです。
  (参考:新・阿蘇学)

コラム 阿蘇で見られる珍しいチョウ
オオルリシジミ
 瑠璃色の羽が美しい。マメ科のクララを食草としていて、幼虫は花のつぼみを食べ、成虫はいろいろな花の蜜を吸っている。クララが自生する阿蘇の草原は重要な生息地となっている。
ヒメシロチョウ
 草原に生息する蝶で「草原の舞姫」とも呼ばれる。モンシロチョウよりも小型でフワフワと飛ぶ。ツルフジバカマを食草としており、道端や畑の周辺など案外身近なところでも目にすることができる。
ゴマシジミ
 ワレモコウを食べて成長する。地域によって色彩変化が著しいこと、アリと共生することで知られる。
ハヤシミドリシジミ
 雄の羽の表面に青緑色の光沢がある。幼虫はカシワを食草とする。立派な森林でなく、阿蘇の山麓によく見られるようなちょっとした林を好む。
オオムラサキ
 日本の国蝶。北海道南部から九州まで分布するが、産地は限られている。森林性のチョウで樹液を吸う。高い木の周りを飛ぶので見つけにくい。
ウラギンヒョウモン
 黄色に黒い斑点がある。初夏の草原でアザミの花の近くなどを飛んでいる。ヒョウモンチョウというタテハチョウ科のチョウは阿蘇に8種類棲息するが、このチョウが一番よく見られる。

オオルリシジミ

ヒメシロチョウ

ウラギンヒョウモン
(参考:阿蘇の自然ガイド、新・美しい自然公園11、一の宮町史/自然と生き物の讃歌)

2) 糞虫  
   阿蘇の草原には、牛馬の糞を食べる糞虫も多くみられます。数は、熊本県が九州一で、センチコガネ、オオセンチコガネ、オオマグソコガネなど現在47種類が確認されています。その名前に似合わず見事な色合いや立派なツノを持つものもいて、なかなか興味深い草原の昆虫となっています。
 残念ながら、阿蘇の糞虫は、ファーブルの本に出てくる「糞転がし」のように糞を転がす姿はあまり見られず、糞の中や糞の底部・表面、糞の下の地下にいて、糞を食べたり、産卵したりします。また、種類によって好きな糞が決まっていて、新しい糞が好きなものから、時間が経って古くなった糞を好むものまで様々で、自分の好みに厳しいグルメな昆虫といえます。
(参考:一の宮町史/自然と生き物の讃歌)
糞虫(糞に群がるセンチコガネ)


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